相手を理解するということ

ある雑誌を読んでいたら、理解とは要約できることと書いてありました。

相手がいちばん言いたいことを汲み取る力=要約力。

要約ということばから、わたしがすぐに浮かんだのが、SMAPが歌っていた「セロリ」という歌(作詞は山崎まさよし氏)です。

「育ってきた環境が違うから好き嫌いはイナメナイ 夏がだめだったり セロリが好きだったりするのね」と始まります。

なんの歌なんだろうと思って聴いていると、「ましてや男と女だからすれちがいはしょうがない 妥協してみたり多くを求めたりなっちゃうね」と続きます。

ここらへんで、男女の恋愛の歌なのかなあという感じです。

さらに、「何がきっかけで どんなタイミングで 二人は出逢ったんだろう やるせない時とか心許ない夜 出来るだけいっしょにいたいのさ」となってくると、やはり、だれか好きなひとを想ってる状態なのねって思います。

最後のほうでは、「Umがんばってみるよ やれるだけ がんばってみてよ 少しだけ」って、相手に投げかけるような感じになります。

 

さて、問題です。

この歌でいちばん言いたいことはなんでしょう。

答えは、最後の歌詞に要約されています。

「なんだかんだ言っても つまりは単純に君のこと 好きなのさ」

 

この歌では、「つまりは」と最後のほうで、自分から要約してはっきりと好きと言っていますので、いちばん言いたいことがわかります。

しかし、相談の現場では、自分の言いたいことを要約して話せるご相談者は、ほとんど(まったくと言ってもよいかも)いません。

多重債務・生活困窮相談で話を聴く相手は、複数の要因を抱えている、自分の悩みを整理できない、どこに行けば良いのかわからない状態です。

また、こころが弱っていて、疲れ果てていて、ああしろこうしろと言われても動けない状態でもあります。

このような状態のご相談者への対応の一歩は、まず、相手の想いを受け止め、相手の想いを理解すること=要約することから始まります。

 

では、練習問題です。

ずっと自殺を考えているひとが、次のように話しました。

「天秤の両側に生と死があって、とにかくどちらでもいいから、強く私の手を引いてくれたほうに転がろうと思っている。それなのに、生も死も、いつも同じ力で私を引っ張ってくれようとしない・・・」

さて、このひとがいちばん言いたいことはなんでしょうか。

 

この例題は、社会人対象のワークショップで2人一組になり、お互いをインタビューし合い、最後にそのひとがいちばん言いたいことを一言で要約するワークの中の出来事として、雑誌の中で紹介されていたものです。

このとき、この自殺を考えているひとの相手として、じっくり話を聴いたひとが要約したことば、それは、「このひとは『生きたい』と言っていました」というものでした。

(参考:「親と子で考える14歳から人生学」109ページ 2008年 PHP)

 

わたしは、このように要約できるだろうか・・・自信がありません。

ただただ、修行を続けるのみであります。

 

 

2012年 5月 会報 第24号より