お金持ちよりひと持ち

最近、あるテレビの対談番組で「お金持ちよりひと持ち」という言葉を聞きました。

それが老後を楽しく暮らすコツだそうです。

人間関係の大切さを表している言葉ですが、これは老後に限らず、生まれてから人生を終えるまでの全ての過程において、言えることではないでしょうか。

 

多重債務の問題についても、「お金持ちよりひと持ち」について触れたレポートを読みました。

ちょっと長いですがご紹介します。

 

『現代の貧困は、家族の貧困ではなく、「独りぼっちの貧困」である点に特徴があります。家族からの排除ですね。独りぼっちで誰からも気にされない人たちが貧困を抱えてしまっている。最近、昭和30年代がブームになっています。地域や家族は貧しかったけど、みんなで頑張った、という見方ですが、あの時代の貧困と今の貧困はまったく違うものです。・・・現代の先進国における貧困は、バラバラに分断された、希望なき貧困です。各調査を見ても、家族で支えあっていける層は基本的に豊かです、足かせになってしまうような「壊れた家族」を抱えている層や、独りぼっちの人に対して、どうセーフティーネットを張るかが問題なのですが、従来の家族像に依拠して設計されている福祉システムは、対応できません』

(家族と企業福祉が壊れた後で分断された人々をどう救うか 岩田正美 中央公論 2008年4月号 88~89頁)

 

「独りぼっちの貧困」という視点は、今、多重債務の相談を受ける中で私が感じている事とすっかり重なりました。

このレポートの続きはこうです。

 

『分断された状況において、今後は一人でも生きられる社会にしてくべきか、なんとかこれまでの家族を維持できる社会にすべきか、難しいところだと思います。』

 

本当に難しい問題です。みなさんは、どう考えますか?

 

最後にもうひとつ。童謡「ぞうさん」の作詞でも有名な、まど・みちおさんの「ぼくが ここに」という詩を紹介します(今回はやけに「紹介」が多いですね)。

 

ぼくがここにいるとき ほかのどんなものも ぼくにかさなって ここにいることはできない

もしもゾウがここにいるならば そのゾウだけ 

マメがいるならば その一つぶのマメだけしか ここにいることはできない

ああ このちきゅうのうえでは こんなにだいじにまもられているのだ

どんなものが どんなところに いるときにも

その「いること」ことこそが なににもまして すばらしいこと として

2008年 1月 会報 第9号より