相談を受けるということ(1)

県から委託された「熊本県版市町村のための多重債務相談マニュアル」(熊本県のHPから印刷できます)が、完成しました。

このマニュアルは、「クレジットカウンセリング」(西村隆男・東洋経済新報社・1997年)をテキストにしています。

また、監修から相談カードの様式や記入例などの細かい点まで、当NPOメンバーの力を総結集しました。

 

 

 

 

一市民として、日頃から多重債務に陥っている方の相談を受けているAさんからは、次のような感想が届きました。

「相談者の話を聴く。信頼関係を築く。私が相談を受けて感じていた答えが(マニュアルの中に)ありました。私に相談する人は、私が始めてではなく、以前、専門機関に相談して解決しきれなかった方が大半です。そして、私を信頼して『今度こそ解決させる』という気持ちで話をしてくれます。正しい解決法のスタートは、やはり(相談者が)信頼して話すことだと改めて思いました。これが、再発防止に繋がるとも思いました。」

 

 

 

しかし、マニュアル完成を喜んでばかりはいられない厳しい現状があります。

相談業務や相談員の基本についての理解を進めていくのはこれからです。

相談員が、「相談者との信頼関係を築かなければ、いくら助言や指導をしても相談者のこころには届かない」ということを、わかっていない場合が少なくありません。

上からの目線で対応し、命令したり、相談者の代わりに相談員が動いてしまう場合もあります。

相談員としては、これが一番楽な方法であり、一番仕事をしているように見え、相談員の満足感も満たすからです。

 

 

 

今、話題のメタボリック(メタボ)対策では、保健師さんたちがメタボだと判断された方たち(対象者)に、生活改善指導・栄養指導などを行なうことが義務付けられたようです。

これに対してある学会では、「対象者と保健医療従事者の信頼関係づくり」の研究がはじまっています。

対象者に指導する内容は、運動する、バランスのよい食事をとる、規則正しい生活をする、この3つしかありません。

対象者は、どうせ指導(説教)される内容は予想できるわけですから、その場から早く逃れたくて素直に「ハイ、ハイ」と応えるだけでしょう。

 

 

 

興味深いのは、このように保健師が「聞きたいことだけ聞く、言いたいことだけ言うという対応は、相談ではなく尋問であり、自分の結論に引きずり込むためのものでしかない。

対象者の行動が変容しないのは、対象者が悪いのではなく、保健師の対応に問題があるからだ」という考え方が根本にある点です。

これは、多重債務相談においてもそのまま応用できるように思います。

相談者に対して、心から生活再建をしてほしいと願うひとならば、ここに書いたことは、すぐにお分かりいただけるでしょう。

続きは、次号で。

2008年 6月 会報 第10号より