相談を受けるということ(その2)

これまで、たくさんの方のご相談を受けてきましたが、「失敗だったなあ」と思う対応がいくつもあります。

相談者はすべて話せていない状態だったにもかかわらず、債務整理につなぎ借金を抱えたまま破産し、再び多重債務に陥ったケース。

借金を繰り返す背景に、暴力の問題があったことに気づかなかったケース。

名義貸しを繰り返す原因を相談者の意思の弱さと思い込んでいたが、コミュニケーションがうまくとれない障がいが原因だったケースetc.

 

今こうして失敗したケースを振り返ってみると、正しい知識をもつことの大切さに気づきます。

悩んでいるひとのこころの状態、パーソナル障がいや依存症、発達障がいなどの知識は、相談などの対人支援を行なう場合には必ず持つべきだと考えています。

 

たとえば、依存症は、本人の意思の問題ではなく病気であると言われています。

病気であることを理解し受け止めてはじめて、本人や周囲が依存症というものと正しく向き合うことができます。

しかし、支援者がこれを知らないまま、理解しないまま、病気だという知識がなく、ただかわいそうだという気持ちのまま依存症の相談者に携わった場合、「気持ちを強くもつように」とお説教をしてみたり、適切な支援につなげなかったり、気休めにしかならない言葉をかけたりと、まちがった対応をしてしまいます。

病気という事実は、支援者にとっても受け入れがたいものですが、その事実を理解した上で支援するということは、非常に大事なことです。

 

多重債務に陥った方々の相談を受ける場合、熱心さのあまり、つい相談者のために肩代わりをしたり、指示を出しそれに従ってもらう関係を作りがちになることもあります。

そして、いつの間にか、相談者のためではなく自分の正義感や考えを実現するために、相談業務を行う状態になっている場合も少なくないように感じます。

これは、相談者の自立を妨げることになるのですが、熱心と言われているひとほど、こういう失敗をしがちです。

ひとりよがりな熱意は、迷惑以外のなにものでもありません。

 

相談業務というと、どうしても「解決してやらねば」、「救済してやらねば」という気持ちになり、相談者の手を引っ張って、支援者(相談を受ける者)自身が走っているような対応になりがちです。

しかし、「~してやらねば」という気持ちは、奢りからくるのものです。

実際に求められているのは、相談者の気持ちを受け止める、相談者にそっと寄り添い伴走する、そんな対応だと自分の失敗を通じて痛感しています。

2008年 10月 会報 第11号より