相談者も支援者もごきげんに! ~相談支援事業発表会~

【平成30年度熊本県市町村等自殺対策推進事業補助金事業】お金の学校くまもと平成30年度研修会

 

 

2019年2月26日(火)、14:00から尚絅大学九品寺キャンパス1号館2階において、相談支援事業発表会&情報交換会を実施しました。

これは、平成30年度熊本県市町村等自殺対策推進事業補助金事業の一環で、生活者の視点に立った相談体制の構築と社会資源の整備・充実化のための研修会として実施しました。参加者は34名でした。

今回の研修会では、「ごきげんな発想は、ごきげんを創造する♪」をテーマに、相談支援を行っている団体や自治体がどういう取り組みをしているか事例を発表し、その取組みから生まれたごきげんやハッピーを共有しました。

第1部の事例発表会では、熊本県内から9つの団体・自治体が支援をしていくうえでの工夫やコツを非常に簡潔にまとめて発表しました。

コメンテーターの西田晃一郎氏(元伊万里市社会福祉協議会職員)により事例一つひとつのよい点についてコメントがあったので、参加者は各団体の取り組みを整理しながら聞くことができました。

 

第1部の発表団体・自治体は以下の通りです。

  • 指定就労継続支援B型事業 若葉作業所
  • コミュニティセンターりんくる
  • 南関町総務課
  • 玉東町総務課
  • 和水町総務課
  • 玉名市くらしサポート課
  • ケアビレッジたがの里
  • 株式会社サンコーライフサポート
  • 水俣市社会福祉協議会

(発表順)

 

第2部では、事前に参加者から寄せられた相談を共有し、支援できること・できそうなことについて発表者や参加者が自由に意見を交換しました。具体的なアイデアがたくさん出たので、紙面でご紹介します。

 

 

【事例】 長年親元で暮らしてきた障がい者がいるが、両親が高齢になりそれぞれ病気による入院や介護が必要になってきたため、近所で暮らすきょうだいが世話をするようになり、きょうだいの負担が大きくなってきた。

 

【意見・アイデア】

  • きょうだいからの支えはどのようなものか?他の者に代わることができるか?
  • 衣食住のうち、食についてはどういう状況か?(具体的には、買い物に行けるか、自分で食べられるか、食事後のごみ処分はできるか。)→本人のできることをみて、きょうだいには環境づくりを提案したい。例えば、大きいゴミ箱を一つ用意すれば収集日にそのごみ袋だけを捨てるとよいなど。
  • 65歳未満であれば、グループホームへの転居も考えられる。
  • 本人と支援者で、本人の「やりたいこと/やりたくないこと」を確認しあい、受け止める。そして、ステップごとに今後の目標設定を考える。
  • 本人のできること/苦手なことを、本人と周りの人で共通理解を図る(目標に到達するために必要なものを整理する)。

  • 本人のできること/苦手なことを知るために、「女子会をしましょう」と言って、本人に料理をしてもらうことで、できる/できないことを見極める。
  • 本人と一緒に何かをやってみる(カレー作り、家計簿、レシート整理など)。
  • 相談を受けた人が他の職員とペアを組んで活動する。相談をキャッチした人が、パスを渡せる人・わかりそうな人を知っておくことが大切。
  • ストレングス視点で見るとできることが多いと感じる。障がい者サービスを利用できる、というのも強みの一つ。サービスを利用することで、就労先を見つけたり、一人暮らしもできたりするのではないか。
  • 両親を主人公にして施設のケアマネジャーや病院のソーシャルワーカーに相談することもできる。そこから、他の機関につなげることが可能。
  • 長年自宅で暮らしてきたので、民生委員や自治会など近所とのかかわりもあるのではないか。
  • 本人がヘルパーを利用しながら自宅で暮らすという選択肢もあるのではないか。
  • 本人と親との関係はどうなっているのか。ずっと親元で暮らすということが本人の自立にとってどういう意味を持つのか、という視点もある。

 

研修会の最後に、川﨑孝明准教授(尚絅大学短期大学部)より今回の研修会をまとめていただきました。

(隈 直子)

 

研修会を終えて

川﨑孝明准教授(尚絅大学短期大学部)

今回の研修会は、当NPO法人のこの数年間の実践をまとめる企画だったと感じています。お金のやりくりに着目した生活支援にいち早く取り組み、自治体や関係機関に働きかけ、それをつなぎ、事業化を模索するという活動は、NPO法人という非営利活動だからこそできることだと思います。

 

研修会終了後に私が参加者から次のような感想メールをいただきました。「この企画をぜひ熊本県社協に見ていただきたかった」と。

 

昨年秋に行われた生活困窮者自立支援全国研究交流会(熊本県立劇場、熊本学園大)では、熊本県が生活困窮者自立支援における任意事業を県内全市町村で実施していることを大々的にPRしました。実態は県社協が主導し、各市町村での任意事業を広域的に実施しているのであり、見方をかえれば、各市町村が積極的に事業展開しない(できない)ので、県主導でやらざるをえない本音が見え隠れしています。

 

この背景を踏まえると、今回発表した県北の中・小規模自治体や関係機関とのつながりとそれを支える仕組みづくりを共有することは、全国でも先駆的な実践としてモデル化できると思います。

 

今後はさらにこの企画を全国で知ってもらい、各方面でそのノウハウを身につけてもらう取り組みができればと考えています。

 

今回の研修会に準備段階ならびに当日携わってくださったみなさま、本当にありがとうございました。

 

2019年 6月 会報 第35号より