消費者金融大手4社の現況と政策展開について

本誌第8号に記載の通り、2006年12月の新貸金業法の成立以来、貸金業を取巻く状況は急激に変化している。大手消費者金融業界4社(アコム、武富士、プロミス、アイフル、以下同様)のその後の特徴的な動きを、再度、取りまとめました。

 

(1)08年3月期、大手4社黒字へ転換、融資は縮小、3社減収

消費者金融大手4社の2008年3月期連結決算が15日、出そろった。合計で約1兆7000億円の赤字となった前期に比べ業績は持ち直し、4社とも黒字に転換している。最終利益の合計は約930億円。売上高に当たる営業収益はアイフル、アコム、武富士の3社が減少。貸し倒れを減らすため融資の審査基準を厳しくし、貸付金残高が縮小したことが響いている。三洋信販を子会社化したプロミスは増収となった。

前期はグレーゾーン金利に伴う「過払い利息」の返還に備えた引当金積み増しが赤字の要因だったが、利息の返還請求は依然多いものの、各社はこれまでの引当金で処理できると判断。08年3月期での一層の積み増しは見送られている。

消費者金融業界は中小業者の破綻や廃業が続出している。(2)に記載の通り、貸金業規制の強化で融資は縮小傾向にあり、業界再編が加速しそうな様相である。当面は米ゼネラル・エレクトリックグループの「レイク」、米シティグループの「ディック」など外資系の売却が焦点になっている。

15日に決算発表したアイフルの最終利益は274億円。貸付金残高が16.1%減と大幅に縮小したため、営業収益は、18.7%減の4057億円にとどまった。

貸付金残高は、アコムが9.3%減、武富士も16.5%減。三洋信販の分が加わったプロミスは17.8%増だった。09年3月期の最終利益はアコムとアイフルが増益を予想。プロミスと武富士は減益を見込んでいる。

(日経5月9日、ニッキン5月23日参照)

 

 

(2)ローン残高が5年で22%減少

消費者金融市場の縮小に歯止めがかからず、大手4社の無担保ローンは08年3月期、合計で4兆4千億円程度まで減少する見込みである。これは、5年前の03年3月期との比較で22%の落ち込みである。新規申込数が減少したことに加え、与信運営(審査スタンス)の厳格化を強めた結果と見られている。武富士の減少率は、この5年間で3割近くに達している。08年3月期は1兆2千億円の予想で、これは同社の10年前の貸付残高と同規模である。ついで、落ち込みが大きかったのが、23%減少のアイフルである。

一方、相対的に減少率が低かったのは、プロミス(16%減少)と、アコム(19%減少)である。プロミスは04年に三井住友フィナンシャルグループに、アコムは、三菱UFJフィナンシャルグループの傘下に入ったことで、ブランドイメージが向上したことがプラスに影響している。多重債務者問題に端を発し、貸金業規制法(現貸金業法)改正前の05年~06年年末に高まった“消費者金融業界バッシング”の悪影響が他社と比較して小さかったのが影響しているとのこと。消費者金融市場が90年代に急成長を遂げた原動力は、アコムが投入した自動契約機の利便性にあった。それに大手各社が追随し、市場規模を飛躍的に拡大させた。

反面、「非対面の気軽さが過剰な借入れを促進」し、過分な遊興費のために多重債務に陥るケースが少なからず発生、グレーゾーン金利の存在も之ありで、消費者保護の高まりの中で問題視されてきた。06年12月の貸金業規制法改正以降は、上限金利の引き下げを前倒しで実施し、与信運営(審査スタンス)も引き締めを強めたため、契約率が顕著に低下している。既存の貸付先も含めて与信枠を厳格に運営していることから、大手4社のローン残高は、軒並み大幅減少を余儀なくされるに至っている。

(ニッキン3月21日参照)

 

 

(3)新規の優良顧客の獲得強化へ

こうしたことから、大手消費者金融各社は、貸出上限金利の引き下げに伴い与信基準を厳格にしたことで「マーケット規模の縮小がさけられない」ことから、新規の優良顧客の取り込みを強化しており、各社とも、新規顧客向けの最優遇金利となる“下限金利”の引き下げや新商品の投入が相次いでいるほか、広告プロモーション(宣伝)を刷新する動きも広がってきている。

消費者金融大手4社は、貸金業法の完全施行を1年半後に控え、07年6月から08年1月までに新規客の貸出上限金利を年18%以下に引下げた(会報9号に記載済)。これに伴い与信基準(審査基準)の見直しを実施している。従来、20%超で融資していた貸し倒れリスクの高い人への融資が出来なくなったことから、新規の優良顧客の獲得が大きな課題となっている。

アコムは、3月末から、最優遇金利をそれまでの12%から7.7%に引き下げ、業界最低水準となった。(年利7.7%というのは、これまでの業界の常識を覆す超低金利である。恐らく「消費者金融イコール高金利」という負のイメージを一新するための政策的な最優遇金利であることから、融資対象は超優良企業の社員等に限定されることが予測される…編集子)。

武富士は、4月11日から最優遇金利13.5%から9.125%に引下げた。また、スコアリングで否決された顧客に対し、支店長がカウンセリングによる個別審査で10万円まで融資できる商品を開発。「月に数百人は新規融資が可能になる見込み」とのこと。アイフルは、07年12月から冠婚葬祭や医療費などの目的別無担保ローンの取扱を開始した。プロミスは、「20歳代が新規客のメインターゲット」と捉え、視認性・操作性の高い機能を随時、追加している。新しいテレビCMを3月から放映するなど広告プロモーションの刷新も相次いでいる。

(ニッキン4月18日参照)

 

 

(4)過払い金問題は出口が見えず?

大手消費者金融会社が抱える過払い金返還請求問題の出口が見えてこない。最大手のアコムは、07年度下期も、返還金額が400億円を超えるペースで推移しており、高止まりの状態である。返還請求の水準は「増加には歯止めがかかってきた」(プロミス社長)という見方の一方で「高止まりの状態が続いている」(アコム社長)など、今後2~3年の間、高止まりが続くという悲観的な見方も少なくない模様である。

アコムは、07年2月度に60億円を超えて以来、毎月50億から70億円台の返還金額となっている。返済に困っている(多重債務者など)人からの請求は下降傾向が鮮明になっているが、一方で、「ローンを完済した元債務者からの請求が増加している」とのことである。

(ニッキン3月28日、5月23日参照)

 

 

2008年 6月 会報 第10号より