人吉市全職員多重債務相談研修

~住民からの多重債務・生活困窮者等相談の対応及び庁内連携について~

去る10月31日、11月2日、12日の3回に亘って、人吉市で職員を対象とした多重債務相談研修が行われました。人吉市では平成20年度にも全職員を対象とした多重債務相談研修を実施されましたが、今回はそれ以降入庁の職員や、特に関連性が強い部署の職員等、約120名が対象でした。当NPOも企画、実施を協働で担当しました。

研修内容は3日とも同じで、1日3部構成。参加者には3日間のうち、自分に都合のよい時間帯を選び、第1部、第2部、第3部の全てに出席をするという形式で参加していただきました。

 

 

第1部(70分)「住民からの多重債務・生活困窮等相談の対応及び庁内連携について」

主に知識や情報の提供です。

改正貸金業法が平成22年6月18日に完全施行され、多重債務改善プログラムにより市町村の多重債務相談窓口が整備されていくに連れ、多額・多重債務に関する相談件数は減少してきています。しかし、借金返済のみならず、税金が払えない、国民健康保険料・国民年金掛金が払えない、家族間の不和等、毎日の生活に困窮・疲弊している住民が多く潜在していることが見えてきました。

このような方がたの暮らしを改善していくために行政としてどのように取り組めばよいのか、他の市町村ではどうしているのか、一つのヒントとして、平成24年5月にNHK熊本で放映された「長洲町の取り組み」のビデオを視聴しました。ビデオの中で職員の方が、「役場に相談してよかった、と思ってもらえるように・・・。」と話していたことに対し、頷いている参加者も多数見受けられた事が印象的でした。

 

 

第2部(70分)「レシートプロファイリング」(講師:トトハウス前田芳男さん)

これは、『ある人が買い物等の際に受け取ったレシート(約1週間分)の情報から、その持ち主がどういう人であるかを推定し、どれだけ人物に肉薄できるかを競う』ワークで、5~6人のグループに分かれ、レシートを見ながら皆で討論しました。

レシートを見て、性別、年齢、職業、家族構成、住所、金銭感覚、趣味嗜好等を推測します。

自分では、○○○と思っていても、他から△△△じゃないかと言われると、「そうかな?そうかも、いや絶対違う」等、どんどん皆さんの声が大きくなり、賑やかになっていきました。今回は人吉市内の店舗のレシートだったため、この人物の地理的移動が参加者に分かり易く、その分推測も盛り上がったようです。

一見、何気ないワークに思えますが、井戸端会議的対話の中で多角的な視点から考察し、意思決定をする訓練の一つになったようです。

 

 

第3部(90分間)「多重債務問題・生活困窮等相談の対応及び庁内連携のためのケーススタディ(ワークショップ)及び質疑応答」

第1部と第2部を踏まえての実践というところで、実際の相談を基に、①相談者が困っていることは何でしょうか?②この家族が抱えている問題には、どのようなものがあるでしょうか?③相談者の状態に気付いた場合、自分の立場で、また、行政としてどのような支援ができるでしょうか?の3点を中心に、グループに分かれ討議しました。

グループを組む際、同じ課の人が集まらないようにしました。多角的な視点からの支援を見つけ出すためです。「自分の課では、こんな事ができる。その問題については〇〇課の応援が欲しい。」といった具合です。これらの意見を総合して、「支援計画書」の作成に繋げます。

「支援計画書」を作成する際は、「ICF※という視点」から相談支援を考えれば、実効的な計画が立てやすいということで、「ICF」という聞きなれない言葉の説明に参加者は熱心に聴き入っていました。

※ICF(International Classification of Functioning Disability and Health)
多重債務・生活困窮を個人の問題とするのではなく、環境との関係でとらえ、周囲の物理的工夫や人的な働きかけや配慮をすることにより、活動がうまくいくという、ものの見方・考え方

2013年 4月 会報 第24号より