FM中九州「子どもの金銭教育」

ナビゲーター:本田みずえ

  • 本田アナ:先月、お小遣いを通して、親に子どもの金銭教育の大切さを認識してもらおうという 「熊本おこづかい会議」が熊本市で開催された。この会議の企画・運営に当たったのが、今日スタジオにお越しいただいた消費者教育NPO法人 「お金の学校くまもと」代表の徳村美佳さん。今日は、「子どもの金銭教育」について話を伺う。 よろしくお願いします。
  • 徳村:どうぞよろしくお願いします。
  • 金銭教育活動を専門に行うNPO法人は、全国でも稀だということだが、 「お金の学校くまもと」を設立したきっかけは?
  • 私は平成7~12年まで熊本県消費生活センターの相談員をしていたが、 その時にかかってきた相談の電話で、ものすごく印象的なものがあった。「今から私は死にたい」と言うので、「どうしたんですか?」と尋ねると 「家族に内緒でお金を借りてしまった。どうしても返せない。だからもう死にたい」と言う。その横で小さな子どもが「おかあさん、おかあさん」と、ずっと泣いている声が聞こえる。相談を受けて、これはどうにかしなきゃいけない、相談先の受け皿も増やさければと考えていたのだが、 この問題を未然に、もっと根本的なところから解決するようなことをしなければいけないんじゃないかと考えると、 やはり“教育”が必要だと思った。
  • 今のケースは、多重債務の相談ですね。全国の破産者数が新聞などに載ると、熊本は必ず上位にランクインしている。 となると、こうした金銭トラブルを未然に防止することが大事になってくるわけだ。「お金の学校くまもと」のメンバー構成は?
  • 消費者教育を実践する者、消費生活アドバイザー、弁護士、大学の先生、 それから消費者問題や多重債務の問題は福祉的なものも絡んでくるので社会福祉士の方、 行政と一緒にやりいろいろな提案もしたいので公務員の方も入っている。 またお金のことは心の問題とも関わるので、カウンセリングを専門にやってらっしゃる方など いろいろな分野の方が集まっている。
  • 昨年の5月に発足からまもなく一年を迎えるわけだが、 これまでどういう活動をされてきたのか?
  • 夏休みに「夏休み子どものお金の教室」といって、県の消費生活センターを見学したり、 日本銀行熊本支店を見学するイベントを開催した。また、県の金銭教育に関するイベントを企画・運営した他、小学校の子ども達向けに参加型学習会を開いたり、 PTAから呼ばれて講演会を行った。
  • 今日のテーマは「子どもの金銭教育」だが、金銭トラブルに巻き込まれるのは大人が多いのに、 なぜ子どもの頃から金銭教育が必要なのか?
  • 最近、全国的に子ども達(6~17歳)の消費者トラブルが非常に増えてきている。 2002年度のデータを見ると、その3年前の4.6倍。大人を含めた全体の相談自体の1.8倍に比べると、 子どもの伸び率が尋常でない。子どもも消費者なので、早いうちから教育をキチンとやらないと、現状としてこういうことがある。
  • 全国的にということは、熊本県も例外ではない。
  • 県の消費生活センターのデータを見ると、若者の相談も非常に増えて、全体の2割を占めている。
  • 子どもの金銭教育について、これまで行ってきた活動はどういうものか?
  • 幼稚園や保育園の園児から金銭教育を行っているが、とても単純なことからはじめる。「お金はどこからくるのかな?」と子どもに聞くと「銀行」と答える。つまり、銀行がくれると思っている。 「どうして」と聞くと、「だって、機械からお金が出てくるところを見た」と言う。
  • 親と一緒にATMの前まで行って、お金が出てくるところを見ているわけだ。
  • けれど、お金が入ってくるところを見ていないし、見えない。その仕組みをわかっていない。お金と労働が非常に密接につながってすぐに浮かぶ子と、なかなか出てこない子がいる。
  • 年齢もあるのだろうが、ある程度の年齢に達しても そういう感覚が実感として身についてない子がいるのだろう。
  • 親が働いてお金を持ってきているとわかっているのだろうが、どこまで実感しているのかわからない。例えば、小学2年生の子ども達のワークショップで「魔法の手」というのを行った。「手を一回たたくと一円出てくる魔法がある。コンビニで一時間働く分のお金を出してみよう、一時間いくらですか?」 と聞くと、まず答えられない。3000円とか一万円という子どももいる。でも「小型ゲーム機やゲームソフトがいくら?」と聞くと、その値段は言える。
  • 子どもは、自分達に必要なものは金銭の把握がしっかりできているわけだ。
  • 興味があるものはあるのだが、それを買うにはどれくらいお金が必要で、 それを稼ぐのがどれだけ大変かということがわかっているのかなぁと思う。小学5~6年になると「欲しいと必要を考えよう」といことで、携帯電話が必要かどうかということを考えていく。その中で携帯電話に関するドラブルの情報の話もする。
  • 携帯電話は、徳村さんや私の子ども時代には全くなかったものだ。 今の子どもは、携帯を使っても料金の請求は親の元にいくわけだから、実感がないのだろう。
  • お金の流れが見えないでしょう?どうやって払うのかは知っているが、いくら?と聞いてもわかっていないことが多い。
  • 子どもにお金との付き合い方を教えていくのは大事だとわかったが、 一番身近に接するのは親である。先月の「熊本おこづかい会議」では各家庭での取り組みの例が発表されたそうだが、親はどう取り組めばいいのか?
  • 家庭の中でお金についてたくさん話をして欲しいと思う。そう言うと、 「子どもにお金の話をするのはちょっとえげつない」とか、熊本弁でいう「よくたれ」とされて、上品でないとされる。
  • お金の心配を子どもに見せたくないという親心もあるのかもしれない。
  • お金に振り回されることは恥ずかしいことだが、お金とどう付き合っていくかをキチンと話し合うことはとても大事なことで、 これができていないから多重債務などの問題に結びついていくのかなぁと思う。子どもに小遣いを渡して、子どもに任せて、我慢をすることや計画的に使うということ、 責任を果たすとか、色んな経験をさせてはどうかと思う。
  • 親の考え方や子どもの性格もあるから、一概にこれがいいという方法はない。
  • 子どもと日頃から話し合って、ルールを作っていくとか、兎に角いろいろやってみることが大事だと思う。
  • 「おこづかい帳」を活用している家庭もあるそうだ。
  • お金との付き合い方は、自転車に乗るのと一緒と思う。上手にバランスをとらなくてはならない。バランスをとるためにはおこづかいを渡して、お小遣い帳をつける練習をさせてみるのも一つの方法。 やり方も、金額もそれぞれです。
  • そこで失敗したとしても、将来社会に出て多重債務を抱えられるよりはいい。幼いときにいっぱい失敗することで、社会に出て大人になってからお金を上手に管理していけるような 能力をつけることが大事だ。
  • 積み重ねが大事だと思う。
  • 子どもの金銭教育は、家庭だけでなく学校・社会との連携も大切になってくると思うが、やはりまず家庭から。各ご家庭で子どもの金銭教育をどういう風にするか、いろいろ方法があるのでこの機会に考えてみてはどうだろうか。

FM中九州のHPより抜粋しました。